「相続対策」というと、いかに相続税を安くするかということに目がいきがちですが、最も大事なことは円満に遺産相続を行い、そして家族が仲良く暮らしていけることです。
相続税対策を万全にしても、親族間にトラブルが起こり、仲が悪くなっては何の意味もありません。
私たちが考える相続対策とは、
- 1. 親族間の争いを未然に防ぐための争族対策
- 2. 相続税の納税資金を準備するための納税対策
- 3. 相続税を減らすための節税対策
この3つを総称して「相続対策」と考えます。対策を考える順番もこの順番が大事だと考えます。
各専門家と連携しながら、相続を一緒に考え、最善の方法を検討しましょう。
1.推定相続人の確認
相続対策の前提として推定相続人を把握し、今後の対策に備えます。
※一般的な相続人の他、代襲相続人や養子などの確認を行います。
2.相続財産の把握
相続対象財産の中でも、土地の評価は相続税を算出するために特に重要です。
土地は、一般的に相続財産の60%近くを占め、その評価が大きく左右します。
物件調査で相続の対象となる財産を確定させ、資産明細一覧表の作成し現状を把握します。
3.争族対策
事業経営や財産の円満引継対策を考えます。
ご依頼人の家庭の事情や親族構成、財産構成、将来の生活設計など様々な要素を理解した上で、生活権、財産権、事業経営権の承継法を考えていく必要があります。
遺留分に配慮した遺言書作成や、養子縁組などあらゆる手法を検討します。 また、申告期限内に遺産分割を行うための事前対策も検討します。
4.相続税対策
相続税を減らすための「節税」対策について税理士と連携し、検討いたします。
相続税対策
- 財産を減らす
- 生前贈与や配偶者控除制度を活用した贈与を検討します。
また法定相続人の増加対策を検討します。 - 評価を下げる
- 評価の高い資産から評価の低い資産へのシフトや税制上有利になるような土地の使用形態の変更等、評価減の手法を検討します。
- 納税資金化を図る
- 対象となる土地の売買実例と路線価を比較し、金融資産で納税する場合と、物納する場合などケースごとに比較検討します。
物納を予定していないケースでは、相続税を上回る納税資金を生み出しておくため、第三者への不動産売却や同族会社への売却などにより資金化する方法を検討します。
5.物納対策
相続税納税対策として、国税局の定める物納要件に適合するように事前対策を講じます。
相続税に限っては、金銭での納付が困難な場合、一定の相続財産で納付することが認められています。そのためには、その財産(不動産)が以下の物納要件を満たしていることが重要です。予め権利関係や契約書等の整備をしておく必要があります。
また、相続税の納付期限は相続発生後、10か月以内と短く、相続が発生してから対策を講じても間に合わないことが多いので、早めの対策が必要です。
物納の要件
次に掲げるすべての要件を満たしている場合に、物納の許可を受けることができます。
- 1延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
- 2物納申請財産は、納付すべき相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次に掲げる財産及び順位で、その所在が日本国内にあること。
- ・第1順位 国債、地方債、不動産、船舶
- ・第2順位 社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益証券
- ・第3順位 動産
- 3物納に充てることができる財産は、管理処分不適格財産に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと。
- 4物納しようとする相続税の納期限又は納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること。
- [物納の許可までの審査期間]
- 物納申請書が提出された場合、税務署長は、その物納申請に係る要件の調査結果に基づいて、物納申請期限から3か月以内に許可又は却下を行います。なお、申請財産の状況によっては、許可又は却下までの期間を最長で9か月まで延長する場合があります。
物納不適格財産
不動産に関するものを列記しました。
1管理処分不適格財産
※次に掲げるような不動産は、物納に不適格な財産となります。
- 1. 担保権が設定されていること、その他これに準ずる事情がある不動産
- 2. 権利の帰属について争いがある不動産
- 3. 境界が明らかでない土地
- 4. 隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
- 5. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条の規定による通行権の内容が明確でないもの
- 6. 借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明であることその他これに類する事情があるもの
- 7. 他の不動産(他の不動産の上に存する権利を含みます。)と社会通念上一体として利用されている不動産若しくは利用されるべき不動産又は二以上の者の共有に属する不動産
- 8. 耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数をいいます。)を経過している建物(通常の使用ができるものを除きます。)
- 9. 敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産
- 10. その管理又は処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産
- 11. 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
- 12. 引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産
2物納劣後財産
※次に掲げるような財産は、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り、物納に充てることができます。
- 1. 地上権、永小作権若しくは耕作を目的とする賃借権、地役権又は入会権が設定されている土地
- 2. 法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地
- 3. 土地区画整理法による土地区画整理事業等の施行に係る土地につき仮換地又は一時利用地の指定がされていない土地(その指定後において使用又は収益をすることができない土地を含みます。)
- 4. 現に納税義務者の居住の用又は事業の用に供されている建物及びその敷地(納税義務者がその建物及び敷地について物納の許可を申請する場合を除きます。)
- 5. 劇場、工場、浴場その他の維持又は管理に特殊技能を要する建物及びこれらの敷地
- 6. 建築基準法第43条第1項に規定する道路に2メートル以上接していない土地
- 7. 都市計画法の規定による都道府県知事の許可を受けなければならない開発行為をする場合において、その開発行為が開発許可の基準に適合しないときにおけるその開発行為に係る土地
- 8. 都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除きます。)
- 9. 農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地区域として定められた区域内の土地
- 10. 森林法の規定により保安林として指定された区域内の土地
- 11. 法令の規定により建物の建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含みます。)
- 12. 過去に生じた事件又は事故その他の事情により、正常な取引が行われないおそれがある不動産及びこれに隣接する不動産